ロシアの障がい者ダイバーが、車いすにスクリュープロペラをつけてスキューバダイビングしてみたという話。
普通、足の不自由な人もダイビングするときは車いすから離れて海の中へ入ります。朝日新聞デジタルの動画に少し映っていますが、遠位型ミオパチーの女性が障がい者ダイビング指導団体のインストラクターと一緒に海中遊泳を楽しむ時も、アウトドア用車いす(HIPPO)で移動するのは波打ち際までです。
けれども、ロッククライミングにも挑戦したことのあるロシアの冒険家は、海の中も車いすごと潜ってみせます。スクリュープロペラは水中での移動距離を稼ぐために製作したそうです。
シンプルな仕組みながら、車いすの車輪も活かした実際的な発明となっています。
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水中車いす「バラクーダ」
車いす用のスクリュープロペラを発明したのは、ロシアの Igor Skikevich(Игорь Скикевич)さん。
プロペラとフラップを一体化したものを製作し、これを車いすの左右のハンドリムにひっかけて装着となっています。ダイビング用のタンクは車いすの背もたれの背面に固定。そして体をシートベルトで固定して水中に入ります。
下の動画は Skikevichさんが公開したもので、発明品「バラクーダ(Барракуда)」のデモの様子が見られます。ご本人が登場するのは 2’45経過あたりからのスライド場面です。
操作方法は非常にシンプル。ハンドルというか持ち手を握りながら左右のフラップの向きを調整するだけ。そうすることで水中を自在に進むことができるようになっています。
両手に重いプロペラをぶら下げ持っているように見えますが、ハンドリムに固定されているフラップの向きを車いすの車輪の回転力を利用しながら制御しているので、操作も軽くてラクそうです。
過去にも水中車いすの話題が
2012年のロンドン文化オリンピアード(Cultural Olympiad)で、車いすに乗ったまま海中遊泳するというアートパフォーマンスが披露されたことがありました。
文化オリンピアードというのは、オリンピック・パラリンピックの次回開催国が実施する文化の祭典で、4年間にわたり文化・芸術の舞台公演や作品展示など多くのプログラムが催されます。あまり知られていないようですが、日本でも「東京2020文化オリンピアード」がすでに始まっています。
障害者アート・パフォーマンス「Creating the Spectacle!」
で、ロンドンの文化プログラムの一つとして、車いすパフォーマンスをプロデュースしたのは、インスタレーション&パフォーマンス・アーティストのスー・オースティン(Sue Austin)さんと彼女が率いる Freewheelingチーム。
この時に製作された水中車いす(Underwater Wheelchair)は、座面下に電動推進プロペラ、背もたれ裏にタンクを固定し、車いすの足元にはエイのひれのような形をしたフィンを装着したものでした。
特許も出願しているようです。
UK patent on the underwater wheelchair – Intellectual Property Office
下の動画は TED Talksより(日本語字幕あり)。
3’50経過あたりから「Creating the Spectacle!(光景の創造)」というタイトルのパフォーマンス映像があり、珊瑚の間を遊泳する様子が見られます。
水中車いすには紙飛行機の翼のようなフィンがあるのですが、透明のアクリルボードなので目立ちません。車いすごと海の中へ入り、手の動きだけで水をかいているような印象を受けます。まさに車いすのマーメイドって感じですね。
オースティンさん曰く、「(創作活動を始めたのは)車椅子を使う楽しさや自由な感覚を伝えることで世の中と向き合いたい」からだそうです。
以上、車いすに乗ったままスキューバダイビングの話題でした。
(Top photo courtesy of Pixabay)