3Dプリンター製の水陸両用義足で下肢切断者に水泳の楽しみを

プールで泳ぐ少年

ニュージーランドのウェリントン・ヴィクトリア大学の学生、Stuart Baynes氏が修士論文の一環として製作した水泳用義足

これがなかなかユニークな発想で興味深かったのでご紹介したいと思います。

目次


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下腿切断者のための水泳用義足「Printable Prosthetics」

水泳は、浮力作用によって体重による負担が軽くなる反面、水の抵抗力によって筋力アップや肺活量が鍛えられるなど、健康増進やリハビリテーションの効果が大きいスポーツです。

ただ上肢や下肢の切断者にとっては、まっすぐに進まない、スピードが思ったように出ないといった挫折を味わう人が少なくありません。

そこで、Stuart Baynes氏は下腿切断(膝から下の切断)の人を対象に 3Dプリンターを使って水泳用の義足を製作します。

最初のプロトタイプは、断端(切断部)を包み込む「ソケット」と foot(足首より先の部分)の代わりに「フィン」で構成された義足。これを実際に装着した結果、まっすぐに泳ぐことができ、水泳タイムも大幅に縮んだようです。

その次の課題は、プールサイドで歩くこと。片足ケンケンでの移動は危なっかしいなど問題があります。

Baynes氏のアイデアは、"the exterior walking sleeve" と "the interior swimming fin"の 2つを重ね履きしたような義足。内側はフィン付きの水泳用義足ですが、そこにレッグウォーマーのような義足をかぶせるとプールサイドを歩くことができるというものです。

動画はこちら。

パラ水泳やパラトライアスロンでは義足は使えるの?

パラ陸上では下肢切断の選手が義足をつけて走ったり跳躍したりしていますが、水泳競技ではまったく見かけません。念のため、競技ルールを調べてみました。

パラ水泳

「2016年度 日本身体障がい者水泳連盟(JPSF)競技運営指針 競泳規則」(PDF)によると、

3.8.9
いかなる選手も競技中にスピード、浮力、持久力の補助となるような用具(たとえば水かきのついた手袋、手ひれ、足ひれ、パワーバンド、粘着性物質など)や水着を使用したり着用したりしてはならない。ゴーグルの着用は認められる。不必要な動きを制限するいかなるテープ類の使用も認められない。テーピングは6.2.6の規定で言われていることを除き許されない。
3.8.9.1
レースではいかなる選手も、義眼を除いて、義足や矯正具の使用は許されない

やはり、義足や義手をつけて泳ぐことは認められてないようです。

個人メドレー日本記録保持者の一ノ瀬メイ選手。義手をつけずにバタフライ、背泳ぎ、平泳ぎ、クロールすべてにおいてバランスよくまっすぐに泳いでいますが、体の軸をずらすなどの技術を身につけているそうです。

パラトライアスロン

パラリンピックでは2016年のリオデジャネイロ大会から正式競技となったパラトライアスロン。スイム(水泳)0.75km、バイク(自転車)20km、ラン(長距離走)5kmの総距離25.75kmを競う耐久競技です。

メディアにもよく登場する大腿切断の 秦 由加子選手も出場が決まるなど、パラリンピックTV観戦が楽しみなレースでもあります。

パラトライアスロンでは、バイクやランのときに義足をつけている選手を見かけることがありますが、スイムではどうなのでしょうか?

17.9. パラトライアスロン スイム競技規範/競技用具

d.) フィンやパドル(ただし上記を全てとはしない)を含む、人工的な推進力を生む器具や浮力を生む器具はどんなものであれ許可されない。義肢や整形器具も推進力を生む器具とみなされる。それらの器具の利用は、失格の理由となる。スクリューや義肢などの他の競技者に危害を与えうるあらゆる物体はITU技術代表により競技前に禁止される。

出典:ITU競技規則(パラトライアスロン簡易和訳)| 社団法人日本トライアスロン連合

こちらも、義足をつけて泳ぐことは認められていないようですね。

パラトライアスロン競技では、スイムからバイク、バイクからランに移り変わる「トランジション」タイムも合計タイムに含まれるので、すばやく義足などを着脱したりするのもレースの見ものです。

水泳競技では認められていない義足だけど…

競技では認められていない義足ですが、マイペースで水泳を楽しみたい人には Baynes氏考案の義足を着用するのもアリですね。3Dプリンターだと各個人に合った水泳用下腿義足を安価に製作できます。普及を期待したいと思います。

Source:
Swim Again | Yanko Design
Printable Prosthetics | Brute.

(Top photo courtesy of Pixabay)

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