手話言語条例がひろがれば、あのドッキリCMも現実に?

手話

聴覚障がいの男性にドッキリを仕掛けるCMが話題となっています。

一方で、「手話言語法」制定に関する意見書がほとんどの地方議会で出されたり、国に先行して「手話言語条例」をつくる自治体が現れたりと、手話の普及に向けた動きが全国各地で広がっています。

目次


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ろう者と難聴者の違い

「聴覚障がい者 = ろう者(=手話を使う人)」という誤解がまだまだ多いと感じます。

聴覚障がい者には難聴者もいます。中途失聴者もいます。
そのうち、手話ができる人は10~20%ぐらいです。

最重度の聴覚障がい者のことをろう者と思っている人も多いようですが、必ずしもそうでもなく、難聴の私より軽度の人が自分のことをろう者と呼ぶこともあります。

医師の診断書には"障害種類(感音難聴、伝音難聴)"、"聴力レベル"、"語音明瞭度(言葉の聞き取りレベル)"が書かれることがありますが、"全ろう/ろう"という項目はなく、ろう者と難聴者の線引きに客観的な基準はありません。

要するに、ろう学校出身、日本手話を使う人、ろうコミュニティに属している人などが自分のことを「ろう者」と呼んでいます。

日本手話と日本語対応手話の違い

「手話は日本語を手振りに置き換えたもの」と誤解している人も多いようです。

日本語の語順に手話単語を当てはめたものは「日本語対応手話」です。口パクしながら手話表現でき、難聴者や中途失聴者が主に使っていると言われています。テレビでの手話も日本語対応手話が多いそうです。

ろう者も日本語対応手話を覚えて使うことがありますが、ろう者のコミュニティで主に使っているのは「日本手話」になります。

音声のない世界でできた言葉は、日本語とは語順が違うなど独特の文法体系を持っていて、手の動きだけでなく顔の表情とかも大きな意味を持ちます。

「日本手話」は日本語とは異なる言語なのです。

日本語対応手話のみで手話通訳すると、ろう者から「あなたの手話はわからない」と言われることがあるそうです。

ちなみに、手話検定が主催団体によって2つあって、『全国手話検定』は「ろう者とどれくらいコミュニケーションできるか」を問うのに対し、『手話技能検定』の1級レベルでは「相手に合わせ、ろう者的手話(日本手話)、難聴者手話(日本語対応手話)を使えるかどうか」を問われます。
どちらもトップレベルの手話通訳者は日本手話が使えることが求められます。

ろう者は「言語的マイノリティ」な存在とも言われます

長い間、ろう学校でも手話は禁止されていました。
ろう者側が聴者に合わせるために、口話法などが教えられていたのです。
いわば、普通学校で日本語禁止、英語のみで授業を受けているようなものです。

耳が聞こえる人であれば英語もマスターすることができますが、
ろう者含め聴覚障がい者は、音声である日本語の理解に限界があります。

ろう文化や手話に対する偏見や無理解もあって、ろう学校を卒業しても社会で孤立するろう者が増えました。

そこで1990年ごろから、"ろう者の文化も尊重しよう、手話を守ろう"という考えが世界に広まっていきます。

そして、2006年に国連で採択された障害者権利条約には「(言語とは)音声言語及び手話その他の形態の非音声言語をいう。」と定義され、2011年に改正された障害者基本法には「全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保される」と手話は言語であることが明記されました。

【参考】
日本にあるもう1つの言語 – 日本手話とろう文化 | SYNODOS
日本人の知らない"もうひとつの日本語" | PRESIDENT Online

手話言語法・手話言語条例

手話言語に関する権利をより確かなものにし、手話の普及を目的にした「手話言語法」制定の要望の声が全国各地であがっています。ちなみに、国会で決めるのが"法律"、地方議会で決めるのが"条例"です。

全日本ろうあ連盟によると、ほとんどの地方議会で手話言語法制定を求める意見書が出されたようです。

また、2013年の鳥取県を初めとして、国に先行して手話言語条例をつくった自治体も続出しています。

手話言語法 意見書マップ、手話言語条例マップ | 全日本ろうあ連盟

鳥取県の手話言語条例では、県が手話普及などの施策に取り組むと同時に、県民や事業者に対して次のような責務があるとしています。

(5) 県民等の役割
ア 県民は、手話の意義及び基本理念を理解するよう努めるものとする。
(中略)
エ 事業者は、ろう者が利用しやすいサービスを提供し、ろう者が働きやすい環境を整備するよう努めるものとする。

(引用元:鳥取県手話言語条例 / 鳥取県公式サイト

路上喫煙禁止条例のような罰則はないですが、学校の総合学習で手話を習うなど、手話に接する機会がどんどん増えてきているようです。

話題のドッキリCM

サムスンが聴覚障がいの青年にドッキリを仕掛けたCM。すでにご覧になった方も多いのではないでしょうか。

※(2017/10/16 追記)動画リンク切れ

[ストーリー]
街の人々が1ヶ月ほど手話のトレーニング。
そしてドッキリ当日。姉(妹)と一緒に街に繰り出した青年。いろいろな人から手話で挨拶されたり感謝されたりして怪訝な表情です。
最後にドッキリであることを明かされ、青年は涙をこぼしてしまいます。

短い時間ながらも街の人とコミュニケーションできたことが嬉しかったんだと思います。
手話言語条例が広がり、聴者からもろう者に歩み寄ることで、このCMのような世界も夢ではなくなるのではないでしょうか。

(Top photo courtesy of Pixabay)

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