手動車いすは後輪の位置が後ろにいくほど、すなわち乗る人の重心が前にいくほど安定感が増しますが、小さな前輪に荷重がかかるので凸凹道では動かしにくくなります。
反対に、後輪の車軸が前の方にある"前出し"タイプの場合、駆動輪の上に重心が来るので車いすの動きが軽くなりますが、後方転倒のリスクも多くなります。主にベテランユーザーが使用しているイメージがあります。
前出しタイプの車いすでなくても、斜面や段差を登るときは後ろへ転倒しそうな状態になります。特に前傾姿勢をとることが難しい人は非常に怖い思いをするそうです。
2013年の記事ですが、後輪の車軸でなくシートを動かして重心の位置を移動させるという、なかなかユニークな車いすがあったのでご紹介したいと思います。
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座る人の重心の位置を動かせる車いす「Walter」
スウェーデンのチャルマース工科大学の大学院生2人が、発展途上国の人のためにデザインした車いす。座面シートを前後にスライドできるのが大きな特徴です。
斜面を登るときは、一時的に後ろのロックレバーを解除して座面シートを前方へスライドし、重心の位置を動かします。
現地で実際にテストされた動画はこちら。
途上国(developing countries)では、荒れ地(rugged terrain)や急斜面(steep slopes)が多く、車いすユーザーは誰かの助けに依存(dependency on assistance) している状況です。
「Walter」を現地の人に試してもらったところ、斜面で後ろへ倒れる心配が減り、ハンドリムも小刻みに回しやすくなって比較的簡単に登れるようになったようです。また、座面シートを前方にスライドした状態にしておけば、車いすの移乗(transfer)も容易になります。
途上国では車いすを持っていても外出が難しく失業している人が少なくないそうです。Walterのような車いすがあれば、家から外に出て仕事を再開できる人が増えるかもしれません。今後の動きに期待したいですね。
(Top photo courtesy of Pixabay)