神経難病の1つであるパーキンソン病は発話機能にも障害が現れ、話し方が単調で声が小さい、発音が不明瞭、吃音といった症状が見られることがあります。言語障害だけでなく顔の表情が乏しいこともあって、コミュニケーションがスムーズにいかないことも少なくありません。
言語障害のうち、正しく発音できない症状は構音障害と呼ばれていますが、その中でもパーキンソン病のような症状は医学的に「運動低下性構音障害」という運動性構音障害の1つに分類されています。ちなみに私のような聴覚障がい者の話し言葉が不明瞭なのは聴覚性構音障害です。
構音障害のあるパーキンソン病患者さんのリハビリ訓練法としては、「LSVT®LOUD」のような意識的に大きな声を出して言葉をはっきり喋れるようにするトレーニングがあります。
リハビリでなく、眼鏡で視力を調整するみたいに、耳に装着することで吃音が軽減するというデバイスが米国であるのでご紹介したいと思います。
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DAFおよびFAF法による聴覚フィードバックデバイス「SpeechEasyPD」
イーストカロライナ大学で開発され、Janus Development Group社が販売している、パーキンソン病患者さんのためのウェアラブルデバイス。"PD"はパーキンソン病(Parkinson’s disease)の略です。
耳掛け型補聴器のような形をしたウェアラブルデバイスで、片耳に装着すると自分の声がわずかに遅れて聞こえてきます。遅延聴覚フィードバック(Delayed Auditory Feedback:DAF)という手法です。また、音声の高低を変化させる聴覚フィードバック(Frequency Altered Feedback:FAF)も搭載しており、自分の声と違って聞こえるようにもなっています。
吃音者が他の人と一緒に朗読したり合唱しているときは吃ることがないのは知られていますが、これと似たような音環境を作り出しているのが DAFとFAFです。吃音者の症状の軽減に昔から利用されてきた技術ですが、この「コーラス効果」を SpeechEasyPDはパーキンソン病患者にも役立てているようです。
参考までに説明動画をシェアしておきます。画の動きはほとんどないですが英語スピーチが分かる方はどうぞ。
全てのパーキンソン病患者さんに有効というわけではないと思いますが、早口の人は落ち着いてゆっくり話すことができ言葉も明瞭になるという効果が期待できそうです。
(Top photo courtesy of Pixabay)