パラ陸上の視覚障害クラスはDQが多い!? しっくりこない失格ルール

当ブログの記事「地元ブラジルのおしゃれな視覚障がいランナーにも注目!リオパラリンピック」で応援していた、陸上女子短距離のテレジーニャ・ギリェルミナ選手。

前回のロンドン・パラのときは100mと200mの2種目で金メダルだったのに、今回はリレーの銀と400mの銅だけという寂しい結果に終わってしまいました。

リオの100mは4位。しかし記録上はガイド(伴走者)の助力行為によるDQ(Disqualification:失格)。200m決勝もフライングによる一発退場とまさかの失格続きでした。

IPCによるライブストリーミング配信などを見ていると、ギリェルミナ選手だけでなく視覚障害クラスは失格が多かったような気がします。


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陸上トラック競技で失格となったレース

IPC(国際パラリンピック委員会)のWebサイトには、陸上・水泳などすべての競技の予選から決勝までの結果が載っています。

例)Athletics: Results – Women’s 100m – T11 Final

そこで、陸上のトラック競技で視覚障害クラス(T11/T12/T13)の「失格」をピックアップして表にまとめてみました。少なくとも30人いました。

車いすなど他の障害クラスだと、ざっと見た感じ、フライング以外ではレーン侵害が数人いるぐらいです。

表中の国名は3文字、選手やガイド名は名字の頭文字のみ。

競技種目 ラウンド 国名 選手/ガイド 失格理由
男子100m(T11) 予選1 ANG C / P IPC 17.8
男子100m(T11) 予選3 AZE M / I IPC 6.16
男子100m(T12) 予選2 UZB A / ー IPC 17.8
男子100m(T12) 予選3 BRA J / ー IPC 17.8
男子200m(T11) 準決勝2 TUR T / E IPC 17.8
男子400m(T11) 予選1 FRA A / B IPC 18.5
男子400m(T11) 予選2 CHN F / H IPC 7.10
男子400m(T12) 予選2 NAM A / ー IPC 18.5
男子400m(T12) 予選4 UZB K / ー IPC 18.5
男子400m(T12) 予選4 KEN M / ー IPC 18.5
男子400m(T12) 準決勝1 RSA L / ー IPC 18.5
男子1500m(T11) 予選1 IRI E / S IPC 7.9
男子1500m(T11) 予選1 POL K / L IPC 19.4
男子1500m(T11) 予選1 CHI V / B IPC 7.10
男子1500m(T11) 予選3 TUR K / A IPC 19.4
男子1500m(T11) 予選3 PRK K / R IPC 8.2
男子1500m(T13) 決勝 TUN H / ー IPC 18.2(b)
男子5000m(T11) 決勝 KEN S / T IPC 19.4
男子マラソン(T12) ISR Y(T11)/(2名) IPC 49.6
女子100m(T11) 決勝 BRA G / L IPC 7.10
女子100m(T12) 予選2 UKR B / B IPC 7.10
女子200m(T11) 予選2 CIV D / G IPC 19.4
女子200m(T11) 予選2 NGR O / K IPC 7.10
女子200m(T11) 決勝 BRA G / L IPC 17.8
女子400m(T11) 決勝 BRA S / V IPC 18.5
女子400m(T12) 予選 CHN S / L IPC 17.8
女子1500m(T11) 予選1 RSA C / M IPC 7.10
女子1500m(T13) 予選1 MAW B / ー IPC 18.5
女子1500m(T13) 予選2 KEN M(T12)/ K IPC 7.9
女子1500m(T13) 決勝 MEX V(T12)/ U IPC 7.9

【失格理由】
IPC 6.16 – Removing eyemask
IPC 7.9 – no tether
IPC 7.10 – Guide runners must not push, pull or otherwise propel athletes
IPC 8.2 – Disqualification from further events due to i125.2 (including 162.5)
IPC 17.8 – False start individual event
IPC 18.2(b) – Jostle or obstruction to another athlete, so as to impede his progress
IPC 18.5 – Athlete does not keep his lane from start to finish (except 18.6 (a) or (b))
IPC 19.4 – Athlete did not finish the race ahead of the guide
IPC 49.6 – Guide finished before athlete

失格理由の数字は、「IPC Athletics 競技規則 及び 規定 2016-2017」の条項です。例えば、フライング失格は「IPC 17.8」と表されています。ガイドランナーがフライングした場合もIPC 17.8による失格です。

IPC 19.4と49.6は、フィニッシュラインをガイドランナーが先に越えたことによる失格。マラソンでもそういうことが起きたなんて非常にもったいないですね。

パラ陸上トラック競技のルール

クラス分け

視覚障害のクラスの「T11」は全盲。IPCルールではガイドランナーが必要です。

「T12」は重度の弱視者になります。ガイドを付けるかどうかは選手の自由となっています。

「T13」は軽度の弱視者。このクラスではIPC特別ルールがなく、オリンピックで使うIAAF(国際陸上競技連盟)規則が適用されます。

一般にそれぞれのクラスごとに競技が行われていますが、「マラソン(T12)」のようにT11の選手が参加するケースもあります。

レーン侵害やレース妨害

目が見えにくい選手は自分のレーンのラインが分かりにくいかもしれません。中長距離走では、視野狭窄のために自分の前に他の選手が追い越してきたことに気づかなかったりすることも考えられます。

しかし、曲線レーンの内側ラインを越えたり(IPC 18.5)、他の選手を押しのけたりする行為(IPC 18.2)は、IAAF規則と同じく失格になります。

アイマスク

IPC 6.16は「T11クラスの競技者はアイマスクを装着しなければならない」というルール。

ただし、T12はガイドランナーが付いていてもアイマスク着用の義務がない、ちょっと不思議なルールです。

ガイドロープ(Tether)

IPC陸上競技規則の2016-2017年版によると、IPC 6.17で「(ガイドロープは)伸縮性のない材質で、競技者が利益を得るようなものであってはならない。ガイドロープの両端の長さは、完全に伸ばした状態で100㎝以内とする」と長さ規制が新たに設けられました。

さらにIPC 7.9では

9. 競技者と伴走するガイドランナー(2人ペア―)の誘導方法はロープ使用を必須とする。さらに、ガイドランナーから口頭で指示を受けてもよい。ガイドランナーは走行(または徒歩)によって任務を完了しなければならず、自転車その他の機械的移動手段の使用は認められない。
注意(i):ガイドロープによる結束は、2人の手または腕でのみなされるものとする。
注意(ii):2人は、スタートから終始、ロープでつながっていなくてはならない。例外は、ガイドランナーの交代時とフィニッシュ手前10m地点に2人の最初の足が到達したときである。

というルールになっていて、前回のロンドン・パラにはなかった「ロープ使用を必須とする」「つながっているのは手または腕のみ」が書き加えられていました。

このルール変更を知らなかったか、レース途中でガイドロープから手が離れてしまったかで、ガイドの口頭指示だけで走り続けていたケースがいくつかあったようです。

Men’s 1500m – T11 Round 1 Heat 1 | YouTube

なお男子1500m予選で、スタート直後のポジション取りでガイドが転倒し一時的にロープが離れた場面があったのですが、こちらは失格にならずに済んでいました。

疑惑の女子100メートル(T11)準決勝:リオパラリンピック

個人的にしっくりこないと思っているのが、IPC 7.10。

10.ガイドランナーは競技中のいかなる時点においても、レースを有利に進めるために競技者を押す、引っ張る等して前進を助けてはならない。

IPC 7.6の「(ガイドランナーは)助力やペースメーカーとは見なされない」という考えから、7.10のルール自体はおかしくないのですが、実際に女子短距離走(T11)のレースを見てると失格の判断が難しいなと思ってしまいます。

特に「女子100メートル(T11)準決勝」。

動画では英国のLibby Clegg選手が世界新記録を出したという話で終わっていますが、実はこのレース、前回のブログ記事「地元ブラジルのおしゃれな視覚障がいランナーにも注目!」の追記にも書いた通り、その後に失格、しかし英チームの抗議により失格取り消しとバタバタしていました。

途中で失格とした理由は、「ガイドに引っ張られて走っていた」ということのようでした。

Libby Clegg stormed to victory in her T11 100m semi in a record 11.91 seconds but was judged to have been illegally pulled by her guide, Chris Clarke.
(引用元:ITV News

確かに動画を見ていても、英国と中国の選手はゴールぎりぎりまでガイドが先行して走っています。ロンドン・パラリンピックの女子100m(T11)決勝のときと比べてみても、違いは明らか。

ブラジルのメディアも「男性と競争させられているようなものだ」とギリェルミナ選手のコメントを載せています。

仮に英チームの言うとおり"引っ張っていない"としても、リストバンドのようなガイドロープが小さすぎて手を繋いで走っているような状態なので、ペースメーカーとして伴走している疑いがあります。

女子マラソンの道下美里選手のように、ガイドロープがゆったりしたものだったら疑念もなかったかもしれません。

ギリェルミナ選手の失格とは

女子100メートル(T11)決勝では、今度はギリェルミナ選手が失格になっています。

これも IPC 7.10なのですが、どうもゴール直前のスリングショットのことのようです。

注意(i):スリングショットは、競技者の進行方向に推進力を働かせるために、ガイドランナーが(競技者とつながっている)腕を故意に前方に力強く振り出す技法と見なされる。このような技法の使用はレース中のいかなる時点においても許されない。

ガイドが「フィニッシュラインだから上体を前に突き出せ」と選手に合図を送ったのが、スリングショットと取られたのかもしれません。これも微妙な失格ルールですね。

(Top photo courtesy of Pixabay)

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