前回のブログ記事で紹介した、国際パラリンピック委員会(IPC)制作の『リオパラリンピック卓球ハイライト10選』。
ハイライトシーンの中には、ポーランドのナタリア・パルティカ選手の姿もありました。女子シングルス(クラス10)で 4連覇を達成し話題になった選手です。
生まれつき右肘から先がなく、サーブのときは肘裏のくぼみに球を乗せてトスを上げるパルティカですが、実はパラリンピックだけでなく ITTF(国際卓球連盟)ワールドツアーなど健常者の国際大会でも活躍しています。
日本の福原愛や石川佳純らと対戦した動画もいくつかアップされているので、ご覧になってみてください。
目次
スポンサーリンク
隻腕の卓球選手 ナタリア・パルティカ
ナタリア・パルティカ(Natalia Partyka)は 1989年7月生まれの 27歳。(ちなみに福原愛は 1988年11月生まれで 1つ上)
7歳から卓球を始め、パラリンピック初出場は2000年のシドニー大会のとき。当時11歳、史上最年少の卓球パラリンピアンでした。
2004年のアテネ・パラリンピックでは15歳で史上最年少の金メダリストに。その後も北京、ロンドン、リオと 4連覇を果たし、まさにレジェンドです。
オリンピックとパラリンピック両方に出場した卓球選手
パルティカは、五輪とパラリンピック両方に出場した最初の卓球選手でもあります。2008年北京オリンピックから3大会連続で出ています。
オリンピックは 3大会とも女子団体戦に出場、ロンドン五輪では個人戦にも選出されました。
リオ大会では他にもう一人、両方出場した卓球選手がいます。オーストラリアのメリッサ・タッパー (26) 、右腕に腕神経叢損傷という障がいを抱えている選手です。リオパラリンピックでは予選でパルティカと対戦しました。
同時出場ではないですが、元オリンピック選手が自動車事故で脊髄損傷を負うもリオパラリンピックで復帰、金メダルを獲得したクロアチアのサンドラ・パオビッチ (33) のような例もあります。
ロンドン五輪でシングルス1勝
シード権により 2回戦から出場したパルティカ選手。デンマークの選手と対戦し、(5-11, 11-3, 12-10, 8-11, 9-11, 11-7, 11-9)と苦戦しながらも 4-3と逆転勝利。オリンピックで悲願の1勝を挙げました。
続く 3回戦は Jie Li(オランダ)と対戦。(13-11, 11-6, 14-16, 7-11, 10-12, 7-11)と2ゲーム先取するも壮絶な競り合いの末に 2-4で敗退。もし勝っていたら 4回戦は福原愛との対戦だったので、そういう意味でも非常に惜しい試合でした。
リオデジャネイロ五輪( vs 福原愛 / 伊藤美誠)
リオデジャネイロ・オリンピックで銅メダルを獲得した福原愛・石川佳純・伊藤美誠の日本チーム。卓球女子団体 1回戦の相手がポーランドでした。
パルティカ選手は第3試合のダブルスにグジボフスカ選手とペアを組んで登場。
結果はポーランドの敗退ですが、パルティカの強烈なバックハンドドライブでポイントを奪うなど 1-3 (5-11, 11-9, 2-11, 9-11) と善戦しました。
【NHKリオ】パラリンピックに出場するオリンピアン 卓球 ナタリア・パルティカ選手(ポーランド) – YouTube (1’03)
世界卓球2012( vs 石川佳純)
オリンピックでは直接対決はなかったのですが、石川佳純選手とも国際大会で何度か対戦しています。
2012年の世界卓球ドルトムント大会では、予選リーグで日本vsポーランド戦があり、3番手にナタリア・パルティカと石川佳純のシングルス対決がありました。
動画「世界卓球2012 女子グループリーグC(石川×パルティカ)」(10’49)
動画は テレビ東京の公式YouTubeチャンネルより。2-2で迎えた第5ゲームからの模様です。
世界ランク6位の石川を相手に予想外の熱戦となったこの試合。ラストゲームも一時は 6-2とパルティカ優位の展開となりました。
しかし後半に逆転され、結果は 2-3 (11-7, 9-11, 5-11, 11-6, 9-11)とパルティカ惜敗。本当にあと一歩及ばずでした。
ポーランド・オープン2015( vs 石川佳純)
2015年のITTFワールドツアー、ポーランド・オープンでは石川佳純が敗れるという波乱がありました。
4-2 (5-11, 12-10, 11-9, 11-9, 4-11, 11-4)とパルティカ選手の粘り勝ち。石川選手から初めての勝利です。
ITTF World Tour Polish Open 2015 R64 ISHIKAWA Kasumi vs PARTYKA Natalia – YouTube (58’05)
ドイツ・オープン2014( vs 平野美宇 / 伊藤美誠)
リオ五輪の代表3人枠からは漏れるも、2016卓球女子ワールドカップで最年少16歳で優勝するなど日本勢のなかで一番活躍が目立つ 平野美宇選手。
平野美宇もシングルス含め過去に何度かパルティカと対戦しています。
2014年のドイツ・オープンでは、13歳の「みうみま」コンビがITTFワールドツアー史上最年少ペアの優勝と大きな話題になりましたが、このときの決勝の相手がグジボフスカ/パルティカ組でした。
女子ダブルスの結果は、0-3 (9-11, 7-11, 7-11)というスコアでした。
動画「German Open 2014 Highlights: Grzybowska/Partyka Vs Ito/Hirano (Final)」(2’37)
ノーカット版はこちら。テレビ東京の公式YouTubeチャンネルより。
ITTFワールドツアー ドイツオープン 女子ダブルス決勝 グジボフスカ/パルティカ(ポーランド) vs. 平野美宇/伊藤美誠 – YouTube (25’27)
また、同年12月に行われた 2014 ITTFワールドツアー グランドファイナルでは、準々決勝で福原愛/若宮三紗子組を破るなどして決勝に駒を進めるも、対戦相手は再び平野美宇/伊藤美誠組。
結果は 0-4 (7-11, 6-11, 4-11, 5-11)というスコアになり、グジボフスカ/パルティカ組はまたしても準優勝に終わりました。
みな真剣勝負だから感動する
エキシビジョンマッチ形式でパラ卓球選手とラリーというのはありますが、パルティカ選手はすべてガチの真剣勝負です。
フリーハンド(ラケットを持たない手)が不自由だとどんな影響があるか?
例えが正しいかどうか分かりませんが、腕に三角巾をつりながら試合をするとなると、正確で力強い打球ができない、すばやいフットワークが難しいということが想像できます。筋トレも腕立て伏せなどのメニューをこなすのに工夫がいるかもしれません。
パラ競泳の一ノ瀬メイは、まっすぐ進むために体の軸をずらすなど泳ぎ方を工夫したり、筋トレ用の義手を作製してもらって上半身の筋力強化を図ったりしているそうです。
パルティカ選手も、世界のトッププレーヤーと戦うために自分に合ったプレースタイルを追求し常人以上の練習をしていると思います。
石川佳純らも手加減することなく本気で勝ちに行っているので、熱戦になると純粋にスポーツとしての感動をおぼえます。
(Top photo courtesy of Pixabay)