日本のCMで、手話によるコミュニケーションが描かれているものと言えば、図書館のお姉さんと耳の聞こえない女の子の交流を描いた聖教新聞のTVCM「図書館篇」や、遠距離恋愛のカップルがテレビ電話を通じて《愛してる、おやすみ》と手話で言葉を交わすソフトバンクの Apple CM iPhone4「恋人編」が思いつきますね。
大森南朋と忍足(おしだり)亜希子が出演した KDDIのauのCM「最後のメール」も手話で話すシーンがありました。社員食堂での出会い、激しく手を動かす喧嘩、そして別れの電車を待つ彼女に《君の、トナリ イイデスカ?》と携帯メール。様々なシーンを一気に描いたCMは、もう一度見てみたいものです。
これらは「感動CM」という括りで語られることも多く、私も決して嫌いではないし本当に良いCMだったと思います。
ただ、時には障がい者主演でも笑えるCMを見てみたいものです。
最近、イギリスでコメディタッチに描いたCMが放映開始されたのでご紹介したいと思います。
スポンサーリンク
モルティーザーズのCM「Look on the Light Side」
当ブログの「総勢100人以上で《♪Yes I Can》、リオ・パラリンピックCM『We’re The Superhumans』」の記事でも紹介したことのある、イギリスの放送局「チャンネル4(Channel 4)」。
チャンネル4が中継したリオパラリンピック開会式の合間に、こんなCMが登場しました。モルティーザーズ(Maltesers)というチョコレート菓子のCMです。
「Theo’s Dog」
ジェネビーブ・バー(Genevieve Barr)とララ・スチュワード(Lara Steward)の 2人のろうの女優さんによるテーブルトークですが、放映開始当初は意図して字幕は付かなかったそうです。
(目の不自由な人のために音声ガイドが付いたかどうかは分かりませんが…。)
日本のCMだと手話がわからなくても何となく話の流れは理解できますが、ジェネビーブとララの場合、どんな面白い話だったのだろうと非常に気になりますよね。
後に付いた字幕を読むと、こんなあらすじでした。
昨晩、Theoの家に寄ったジェネビーブ。そこには新しい犬がいた。大きくてバカ犬だった。そいつは立ち上がり、私の補聴器を叩き落とし、そして口に入れちゃった。Theoは明日中に返すと言っているが…。
あらすじだけ読むと、補聴器がなくなって可哀想という話だが、このCMのテーマは「Look on the Light Side」。だから、明るい話です。
ジェネビーブが真似してみせる、犬の間抜けヅラ。テーブルの上のチョコボールを補聴器に見立て、パクっと食べて「Gone(なくなっちゃった)」と手話。もう一回、「Gone」と気落ち。最後、犬の口から取り出した(?)補聴器を汚そうにする。いろいろコミカルな演技があって、何回見ても笑えます。
障がい者主演CMだけど感動一切なし!
モルティーザーズのCMは他にも、骨形成不全症の女優 Samantha Renke主演の「Dance Floor」、脳性まひの女優 Storme Toolis主演の「New Boyfriend」があり、障害のことをちょっとしたジョークに変えています。
また、これら3本のメイキング映像というか、裏話的な動画も公開されているので、ご興味ありましたらどうぞ。
Maltesers | Look on the Light Side of Disability | Behind the Scenes – YouTube
この動画の最後に Samantha Renkeさんがこんなことを言っています。
"I think it’s going to really change the landscape of how people view disability in the future and hopefully get me more work. (hahaha)"
そう言えば、忍足亜希子も昔、久本雅美が出ていた番組で「コメディもやってみたいし、バラエティ番組もどんどん出てみたい」という話をしていた記憶があります。
車いすやろうの役者さんは、どんなに明るいキャラクターや存在感があっても、車いすや耳が聞こえないことに劇中の意味がないと役を作ってもらえないそうです。また、通行人AやBのようなエキストラや端役の仕事も得ることは難しいと聞いたことがあります。
そうじゃなく、ポリオ後遺症の泉谷しげるのように、不自由な足をことさら触れず、ドラマに多く出て悪役や好々爺など様々な役を演じたりバラエティ番組で暴れまわったりして笑いをとっているような、至極当たり前に障がい者が存在する風景をテレビは作ってもらいたいと思っています。
(Top photo courtesy of Pixabay)